プロジェクト紹介

プロジェクト名

概要

ライフサイエンス分野では、社会的なインパクトの大きい不正事件が相次いで発生している。近年の調査研究では、1〜2割の論文には何らかの不正があることが推測されており、研究公正の推進は喫緊の課題である。本プロジェクトでは、人類の知を拡大したい、あるいは疾患の新たな治療法を開発したいといった、研究者が本来もつモチベーションに着目しており、これらが尊重される研究環境を形成することが、研究不正を抑止し、質の高い研究への志向を強化するという仮説を立てた。

この仮説を検証するために、経験のある研究者へのインタビューを実施し、研究者のモチベーションに影響を与える要因や、不誠実な研究がもつ特徴を抽出、言語化する。インタビューで得られた観点をもとに、ライフサイエンス領域の研究者を広く対象とした質問紙調査を実施し、研究者の立場や年代が与える認識の相違について解析する。質問紙調査の解析結果は学術論文として発表し、これをもとに、健全な研究環境を形成、維持する上で必要な条件をガイドラインとして提案する。

さらに、行政、学協会との連携、あるいは草の根の活動を通じて、ガイドラインで提示される姿勢を広く共有するムーブメントを形成し、ライフサイエンス領域全体が研究環境に目を向ける機会を提供する。また、こうしたプロセスにおいて協働することを通じて、研究者の価値観や研究公正の理解を共有する人的ネットワークを、官学を越えて形成する。

目的

  • 研究者のモチベーションが十分に引き出される健全な研究環境を形成する上で留意するべき事項をまとめた指針(ガイドライン)を作成する。
  • 研究プログラムの設計、競争的研究費の審査、研究機関の人事、研究室における実践といったいくつかの場にあわせた指針のバリエーションを作成する。
  • ガイドラインの意図を共有するためのワークショッププログラムを開発する。
  • 文部科学省との連携を通じて、研究プログラムの企画や研究評価の場において、トップダウンの政策として、指針で提示される認識の共有を促進する。
  • ワークショップ、学協会との連携、SNSの活用を積極的に実施し、ボトムアップのムーブメントとして研究者への周知をはかる。
  • 質問紙調査の結果の解析を論文として発表し、研究公正領域に学術的に貢献する。
  • 研究者のモチベーションや質の高い研究のイメージを共有する官学のネットワークを形成する。
プロジェクトの内容と期待する効果
プロジェクトの内容と期待する効果

メンバー

  • 田中 智之(代表)Satoshi Tanaka
    教授
    所属/
    京都薬科大学 病態薬科学系薬理学分野
  • 加納 圭Kei Kano
    教授
    所属/
    滋賀大学 教育学部
  • 標葉 隆馬Ryuma Shineha
    准教授
    所属/
    大阪大学 社会技術共創研究センター
  • 小出 隆規Takaki Koide
    教授
    所属/
    早稲田大学 理工学術院
  • 石田 柊Shu Ishida
    助教
    所属/
    (現)広島大学人間社会科学研究科
  • ⻄⼭ 久美子Kumiko Nishiyama
    特任研究員
    所属/
    大阪大学 社会技術共創研究センター
  • 鶴田 想人Soto Tsuruta
    特任研究員
    所属/
    大阪大学 社会技術共創研究センター